2014年5月5日月曜日


 他国とりわけ交渉の相手国の産業経済や国益を守るために【国家】なる制度(システム)が存在するわけではないことはみんなわかっている。「では国家は何を守るのか」というと、「国家というシステムはその自己システムのみを守ることがメインの目的であって、そこに暮らす自国民が第一義的に目的化されるわけではない。」そう言っても何ら言い過ぎではないと私自身は思っているのだが、それでは高踏過ぎて(?)【哲学論争】みたいになってしまうから、ここではもっと平たく平凡に表現して、「国家は自国と自国民の国益を守るために存在するわけであり、場合によってはその目的を完遂するため互いに武力を用いることも頻繁にあり、これが嵩じれば【戦争】となる」といった程度の指摘だけに留めて措きたい。これがしつこいくらい繰り返された今回のオバマ来日報道に接して私が感じたことの一つである。  TPP交渉で最後まで日米対立の焦点となったのは、Ⅰ.車の輸入に関して、安全基準の緩和を日本がするかどうか。Ⅱ.豚肉の関税撤廃を日本がするかどうか。この2点である。オバマ(Barack Hussein Obama )はこれを通さないと国内から大批判を受けるし、安倍は逆にこんなのを通したら自分が国内から大批判を受ける。これでは両者譲りようがない。  ここに【主要産業】という言葉があるが、言ってしまえばアメリカの車生産者も日本の豚肉生産農家も最早【主要産業】従事者などでは毛頭ないのだ。世界各国、どの国をとっても【主要】なのは資本でありマネーであって、実際日々【モノ】を作り【食物】を生産している産業は、得体の知れぬデータを駆使し、マネー自体をも投機の対象としている巨大なマーケットの足下にひれ伏しているのである。世界を支配しているのは日夜重層的に展開され続ける【マネーゲーム】の渦なのである。  ただ民主主義国家に於いてはセンキョで投票してくれるのは自分を支持してくれる個々の【人間】なので、オバマも安倍ポンもそこを頼みにしているわけである。  次にもう一つ私が感じたのはオバマのリップサービスである。オバマ来日早々、両首脳は赤坂だかどこだかの小さな三ツ星レストランたる寿司屋で非公式な会食をした。その夜のうちの会食を切望したのは日本側であるが、場所としてその小さな寿司店を希望したのはオバマだった。オバマはその寿司店入口で待ち構える安倍に対して【シンゾウ!】と開口一番大声で呼び掛けたが、咄嗟のアドリブ的な呼び掛けに反応出来なかった安倍ポンは【Japanese Smile】を満面に浮かべて【How are you?】と答えるに留まった。報道された範囲ではオバマが【シンゾウ!】と大声で呼び掛けたのはこれが最初で最後だった。「非公式会談なのだから、これくらいは米国民も笑って黙認してくれるに違いない♪」とそういう判断があったのだろう。これこそが、オバマが出来た精一杯のリップサービスだったのだろうと私は思う。  ところが場所が変わって、両国首脳による公式会談の席上では様相は一変し、オバマは安倍のことを冷やかに【内閣総理大臣】と呼んで押し通し、逆に(取り巻きの入れ知恵があったのか無かったのか)我らの安倍ポンは10回も【バラク】と呼んだのである。「TPPどころかTPOの判断も出来ない奴だ!」と世界中の笑いものになったのが安倍なのである。安倍もその取り巻きもただの田舎モンに過ぎなかった。オバマの暗黙の裡の【制止】も何するものかと、公式会見という場所柄も弁えないで【親密】さを押し売りしたのである。みっともない話だが、これを追及した報道は(私の見た範囲では)皆無だった。  オバマがもしこの公式の場でも安倍を【シンゾウ!】などと呼んでいたら、彼は国中から袋叩きに合っていただろう。  オバマの尖閣発言についてもメディアは(故意なのかアホなのか)【大収穫】一点張りの大合唱だったが、あれは冷静に聞けば中国への気遣いも充分滲ませた発言だったことがわかっていい筈だ。  オバマだって当然、尖閣の領有権を中国が主張していることぐらいは百も承知だ。彼が言いたかったのは【日韓】も【日中】も仲良くやってくれなきゃ困るよということだったのだ。日中の哨戒艇、巡視艇や航空機が頻繁に出入りしている海域は今や一触即発の危機に直面しており、いつ軍事衝突が起きても何の不思議もない状況だ。日中両国とも自分からは軍事攻撃しないと言ってはいるが、そんなものは緊急事態となれば一瞬のうちに反故とされてしまうに決まっている。だから【日米安保第5条】があるから、衝突があれば米軍は出動しますよ。そんなことが起きないよう努力して下さいねというのがオバマから中国首脳へのメッセージだったのである。中国側は「武力は使わないが領有権を放棄することはない」と即座に答えた。云わば【尖閣も台湾も同じだ】というのが米中両国の暗黙の合意事項だったのである。 以下【日刊ゲンダイ】から引用する。 ↓ すし会談からピリピリ “TPP決裂”招いた安倍お子様外交 2014年4月25日 掲載 疲労困憊の甘利大臣/(C)日刊ゲンダイ  国賓待遇や共同声明でスッタモンダし、何から何まで異例ずくめだった日米首脳会談の最後はやっぱり、“決裂”だった。  全く合意点が詰められず、首脳会談後も閣僚級の協議が続いていたTPP交渉は今日午前も引き続き協議が行われる見通しだったが、中止になった。代わりに甘利大臣が記者団に経緯と進捗状況を説明したが、その中身たるや、空っぽもいいところだ。 「私とフロマン通商代表は昨日の午後、再度協議し、昨晩は事務方で深夜の作業を続けました。首脳、閣僚協議で、重要な課題について、前進する道筋をつけることが確認されました。日米が協力し、早期妥結に導くことが重要であり、連携して加速してまいりたい」  たったこれだけなのである。記者団が「大筋合意に至らなかったということか?」と聞くと、「何が大筋合意かよくわかりませんが…」とゴマカした。オバマ大統領の離日直前に出てきた共同声明も「TPPを達成するために必要な、大胆な措置をとる」「日米安保は尖閣を含む日本の施政下全ての領域に及ぶ」という中身で、サプライズなし。改めて、前代未聞のオソマツ首脳会談になったのだが、その背景は何だったのか。 ■共同声明は1日遅れ、形だけ 「共同声明でこれだけモメた首脳会談は前代未聞だと思います。ただ、TPPに関しては、米国では数日前から<合意は難しい>と報道されていた。妥結に至らないのは想定内のことです。それなのに、大統領が日本側に強硬に譲歩を求めたのは、日本に対して良い感情を持っていないからでしょう。大統領の訪日直前に、147人の国会議員が集団で靖国神社を参拝したことも、かなりマイナスの心証を与えていると思います」(元外交官の孫崎享氏)  オバマ米国は妥協しないどころか、共同声明を“人質”に譲歩を迫る場面もあったという。首脳会談前夜の「すきやばし次郎」での夕食会も、かなりピリピリした雰囲気だったようだ。 「オバマ大統領はいきなりTPP交渉の話を始め、その場で、それぞれフロマン代表と甘利大臣に電話を入れて、早期妥結を指示することになった。オバマ大統領は24日朝の皇居での歓迎式典の後も、フロマンに<もっと詰めろ>とネジを巻いたそうです」(官邸関係者)  それで、首脳会談後の甘利担当相とフロマン米通商代表部代表の再協議がセットされたのだが、牛肉、豚肉の関税や自動車の安全基準で折り合えなかった。コメ、麦、砂糖の関税は維持される方向だが、これは牛、豚の関税大幅引き下げが条件だから、何も決まっていないに等しい。  安倍や甘利は「国益を守るために安易な妥協はしない」とかキレイゴトを言っていたが、だったら交渉のテーブルを蹴飛ばして、撤退すればいい。それができなかったのはこんな事情だ。 「総理は共同会見で『自由で開かれたアジア太平洋地域を発展させ、中国を関与させる』と言っていたように、TPPを経済というより安全保障の枠組みで捉えている。TPPは中国包囲網だという認識なのです」(官邸関係者)  だから、交渉を蹴飛ばすわけにはいかないのだ。中国に対抗するために、国を売られたらたまらない。  以上引用終わり。最後はまったくだ。

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